言語聴覚士国家試験の合格率は、第28回(2026年2月21日実施)で66.4%となり、前回(72.9%)から6.5ポイント低下しました。受験者2,187名のうち、合格したのは1,453名です。過去5年間の合格率は66〜75%の間で推移しており、他のリハビリ職の国家試験と比べても年による振れ幅が大きいのが特徴です。
なぜ言語聴覚士国家試験は難易度が高いと言われるのか、そして今から何を対策すればいいのか。この記事では、最新の合格率データと出題科目の内訳、そして現役STの視点から見た具体的な対策ポイントまで、まとめて解説します。
これから受験を控えている方はもちろん、養成校への進学を検討している方や、家族・パートナーが言語聴覚士を目指していて応援したいという方にも参考になる内容です。データと対策の両面から、言語聴覚士国家試験の実像をできるだけ具体的にお伝えします。
そもそも言語聴覚士とはどんな資格か
言語聴覚士(ST:Speech-Language-Hearing Therapist)は、ことば・聞こえ・食べる(嚥下)機能に困難を抱える方へのリハビリテーションを専門とする国家資格です。医療機関だけでなく、福祉施設や教育機関、行政などでも活躍の場があり、理学療法士・作業療法士と並ぶ「リハビリ職」の一つとして位置づけられています。国家試験に合格し、免許登録を行うことで、初めて「言語聴覚士」を名乗って業務にあたることができます。
言語聴覚士国家試験の合格率は66.4%(第28回結果)
過去5年の合格率推移
第28回(2026年)の合格率は66.4%で、直近5年で見ても低めの水準でした。年度ごとの推移は以下の通りです。

| 第24回(2022年) | 第25回(2023年) | 第26回(2024年) | 第27回(2025年) | 第28回(2026年) | |
| 受験者 | 2,593名 | 2,515名 | 2,431名 | 2,342名 | 2,187名 |
| 合格者 | 1,945名 | 1,696名 | 1,761名 | 1,707名 | 1,453名 |
| 合格率 | 75.0% | 67.4% | 72.4% | 72.9% | 66.4% |
こうして並べると、合格率は66%台から75%台まで、年によって10ポイント近い差があることがわかります。「今年は難しかった/簡単だった」という体感が、実際の合格率にもそのまま表れていると言えるでしょう。
第28回で前年から6.5ポイント下がったこと自体は、この5年間の変動幅を踏まえると特別に異常な数字というわけではありません。ただし、直近2回(第26回・第27回)が72%台と比較的高めだった流れから一転しての低下だったため、受験者にとっては例年以上に手応えの薄い回だった可能性があります。いずれにせよ、単年の数字だけを見て一喜一憂するより、複数年の推移として捉えることが大切です。
合格基準は200点満点中120点以上
言語聴覚士国家試験は、1問1点・計200問(200点満点)のマークシート形式(5択)で実施されます。合格基準は原則として120点以上(6割)です。
ただし、その年の問題によっては採点除外(複数の正解を認める、全員正解扱いにするなど)の措置が取られる問題が出ることもあります。第28回でも採点除外等の取り扱いとなった問題が示されており、実質的なボーダーラインは年によって多少前後する点は覚えておきましょう。
マークシート方式であるため「わからない問題は必ず何かをマークする」という基本的な受験テクニックも軽視できません。5択のマークシートでは、記述式と違って部分点は存在しない代わりに、勘でマークしても正解の可能性がゼロにはなりません。特に時間が足りず最後まで解ききれなかった場合でも、空欄のまま提出するのは避けましょう。
試験の形式:12科目から200問が出題される
出題は基礎科目100問・専門科目100問の計200問で構成され、12科目の中から幅広く出題されます。特定の科目に偏った対策では対応しきれない設計になっている点が、この試験の大きな特徴です。
言語聴覚士国家試験はなぜ難しいのか
出題科目が12科目と幅広い
言語聴覚士の国家試験は12科目から出題されます。理学療法士・作業療法士の国家試験が7科目であることと比べると、単純に対策すべき範囲が広いことがわかります。
PT,OTに比べ、STは科目数の多さゆえに直前対策が通用しにくい試験なので、計画的に進めましょう。
臨床実習と試験勉強の両立が難しい
多くの養成校では、国家試験直前期まで臨床実習が組まれています。実習記録の作成や指導者とのフィードバック対応に時間を取られ、まとまった学習時間を確保しづらいのが実情です。「実習が終わってから本気を出す」というスケジュールでは、12科目分の範囲を消化しきれないまま本番を迎えてしまうケースも少なくありません。
体系的な参考書・過去問集が少ない
出題傾向が年によって変化しやすいこともあり、他のリハビリ職と比べて定番の参考書・問題集の選択肢が少なく、独学での対策がしづらい面があります。「この一冊をやっておけば安心」という決定版が存在しにくいため、複数の教材を組み合わせて対策する必要が出てきます。
再受験者の存在が全体の合格率を下げる
一度不合格になった受験者が翌年以降に再受験するケースも一定数あり、再受験者の合格率は初回受験者より低くなる傾向があります。これが年ごとの合格率のばらつきにも影響していると考えられます。
初回受験でのつまずきをできるだけ減らすことが、合格への一番の近道です!
他のリハビリ職と比べても合格率が低め
同じリハビリ系の国家資格である理学療法士(PT)・作業療法士(OT)と比べても、言語聴覚士(ST)の合格率は低めの水準です。
出題科目数の違い(PT・OTは7科目、STは12科目)が、この差の一因になっていると考えられます。「STの国試は難しい」という体感は、数字の上でも裏付けられていると言えるでしょう。
出題科目12科目の内訳
言語聴覚士国家試験で出題される12科目は以下の通りです。
- 基礎医学:解剖学・生理学など、人体の構造とはたらきに関する土台の知識
- 臨床医学:内科・小児科・精神医学など、医療全般に関わる知識
- 臨床歯科医学:口腔・嚥下機能に関わる歯科領域の知識
- 音声・言語・聴覚医学:発声発語器官や聴覚のしくみに関する医学的知識
- 心理学:発達心理学・学習心理学など、対象者の心理面を理解するための知識
- 音声・言語学:ことばの音・文法・意味の仕組みに関する言語学的知識
- 社会福祉・教育:福祉制度や特別支援教育など、社会的支援に関する知識
- 言語聴覚障害学総論:言語聴覚障害全般の評価・支援の考え方
- 失語・高次脳機能障害学:脳血管疾患などによることばや認知機能の障害
- 言語発達障害学:子どものことばの発達の遅れや偏りに関する障害
- 発声発語・嚥下障害学:声や発音、食べる・飲み込む機能の障害
- 聴覚障害学:聞こえの障害とその支援(補聴器・人工内耳を含む)
医学系の基礎科目から、失語症・高次脳機能障害・言語発達障害・嚥下障害・聴覚障害といった専門領域まで、カバー範囲が非常に広いことが一覧からもわかります。養成校のカリキュラムで習う内容とほぼ重なりますが、国試向けにあらためて横断的に整理し直す作業が必要になります。どの科目から何問出題されるかは年によって変動するため、まずは過去問を解きながら「自分が受験した年度・模試ではどの科目の出題数が多かったか」を実際に確認しておくと、優先順位づけの精度が上がります。
言語聴覚士になるまでのルート(養成校の種類)
言語聴覚士国家試験の受験資格を得るためのルートは、主に3つあります。それぞれ在籍期間や学び方が異なるため、自分がどのルートにいるかによって国試対策のペース配分も変わってきます。
どのルートでも最終的に国家試験に合格する必要がある点は共通ですが、2年制専攻科は学習期間が短い分、1年目からかなりのハイペースで12科目をカバーしていく必要があります。自分の在籍期間の長さに合わせて、早め早めに国試対策を組み込んでいくことが重要です。
また、他学部からの編入や社会人経験を経て2年制専攻科に進む場合、医学・心理学分野の学習が初めてという方も少なくありません。既に触れたことのある分野と、まったく初めて学ぶ分野とでインプットのペースが変わってくるため、入学前後の早い段階で自分の得意・不得意を把握しておくと、その後の学習計画が立てやすくなります。
学年別・時期別の学習ロードマップ例
国試対策は「直前期に一気に詰め込む」よりも、早い段階から少しずつ積み上げていく方が、12科目という範囲の広さに対応しやすくなります。以下はあくまで一例ですが、目安として参考にしてください。
特に実習期間中に学習習慣を途切れさせてしまうと、直前期に取り戻すべき範囲が一気に膨らんでしまいます。少ない時間でもいいので「毎日机に向かう」感覚を保つことが、結果的に直前期の負担を軽くしてくれます。
このロードマップはあくまで一例であり、養成校のカリキュラムや個人の得意・不得意によって最適なペースは変わります。大切なのは「いつから」よりも「どのくらいの頻度で」学習を継続できるかという視点です。自分に合ったペースを早めに見つけ、無理のない範囲で継続することを優先しましょう。
合格するための対策ポイント
早期から過去問演習を始める
12科目という範囲の広さを考えると、直前期にまとめて対策するのは現実的ではありません。実習が本格化する前の時期から、過去問を使った演習を習慣化しておくことが重要です。
「まず1周解いてみて、自分の弱点を把握する」ところから早めに始めましょう。1周目は正答率を気にしすぎず、「どの科目にどれくらい時間がかかるか」「どの分野の知識が抜けているか」を洗い出す目的で取り組むと、その後の計画が立てやすくなります。
科目ごとに優先順位をつける
出題数が多い科目から優先的に対策し、手薄になりがちな周辺科目は直前期に詰め込むなど、メリハリをつけた学習計画を立てることが効率化のカギです。
全科目を均等に勉強しようとすると、範囲の広さゆえに時間切れになりやすい点は要注意です。過去問を解いた際に「毎回間違える科目」と「一度覚えれば安定して正解できる科目」を分けて記録しておくと、優先順位がはっきりします。
実習中も続けられる学習ルーティンを作る
まとまった時間が取れない実習期間中でも、通学時間や隙間時間に過去問を1問でも解く、といった「続けられる単位」に学習を落とし込むことが、結果的に直前期の負担を減らします。
「実習が終わったらやる」ではなく、「実習と並行して細く長く続ける」意識が大切です。1日10分でも構わないので、実習期間中に完全にゼロの日を作らないことを目標にすると、直前期に感じる焦りがだいぶ変わってきます。
模試を活用して本番の時間配分に慣れる
200問を限られた時間内に解ききるには、時間配分の感覚を事前につかんでおく必要があります。
養成校や予備校が実施する模試を積極的に活用し、本番同様の時間制限の中で解く練習をしておくと、当日の焦りを減らせます。模試の結果は、自分の弱点科目を可視化する材料としても活用しましょう。
1回受けて終わりにせず、複数回の模試の結果を並べて「伸びている科目」「停滞している科目」を比較すると、残り期間の学習配分を見直す判断材料になります。
苦手科目を可視化し復習サイクルを回す
過去問や模試を解きっぱなしにせず、間違えた問題を科目別に記録し、定期的に復習するサイクルを作ることが重要です。
特に12科目という範囲の広さがあるSTの国試では、「なんとなく苦手」を放置すると本番で思わぬ失点につながります。苦手科目リストを作り、週単位で復習の予定に組み込んでいく方法がおすすめです。
ノートやスプレッドシートに「間違えた問題・科目・原因(知識不足なのか読み間違いなのか)」を一言添えて記録しておくと、同じ間違いを繰り返しにくくなります。
やりがちな対策の失敗パターン
最後に、国試対策でつまずきやすいパターンを3つ紹介します。当てはまるものがないか、一度振り返ってみてください。
対策の続きとして、「言語聴覚士国試対策の予備校・通信講座比較【2026】」や「言語聴覚士国試のおすすめ参考書・問題集5選」もあわせてチェックしてみてください。
よくある質問
不合格だった場合、再受験に回数制限はありますか?
多くの国家資格試験と同様、言語聴覚士国家試験自体に受験回数の上限は設けられていません。ただし、再受験者の合格率は初回受験者より低くなる傾向があるというデータもあるため、初回受験に向けて計画的に対策することが望ましいと言えます。
合格率が年によって変わるのはなぜですか?
その年の問題の難易度調整や出題傾向の変化、受験者層(初回受験者と再受験者の比率など)によって変動します。過去5年でも66%台から75%台まで幅があるため、「今年は難しかったから自分だけができなかったわけではない」と捉え、結果だけに一喜一憂しすぎないことも大切です。
模試はいつ頃から受け始めるのがいいですか?
養成校や予備校によって模試の実施時期は異なりますが、一般的には国試まで半年〜3ヶ月前あたりから複数回受けるケースが多いです。早い時期の模試は「現時点での弱点を把握する」ことが主な目的で、直前期の模試は「本番同様の時間配分に慣れる」ことが目的になります。目的が違うことを意識して活用すると、模試の結果に振り回されすぎずに済みます。
養成校を選ぶ際、国試合格率は重視すべきですか?
養成校ごとの国試合格率が公表されている場合、参考情報の一つにはなりますが、それだけで判断するのは早計です。合格率は在籍する学生の人数や、その年の受験者層によっても変動しやすい数値だからです。カリキュラムの内容、実習先の種類、模試や国試対策のサポート体制など、複数の観点から比較検討することをおすすめします。
国家試験に不合格だった場合、就職活動への影響はありますか?
養成校卒業後すぐに免許登録できないため、就職先によっては入職時期の調整や、合格後の正式採用への切り替えなど、対応が必要になる場合があります。実際の取り扱いは就職先によって異なるため、内定先や養成校のキャリアセンターに早めに相談することをおすすめします。翌年の再受験に向けて学習を継続しながら、可能な範囲で臨床に関わる働き方を探すという選択をする方もいます。いずれにしても、一人で判断せず早めに周囲へ相談することが、その後の選択肢を広げることにつながります。
まとめ
第28回言語聴覚士国家試験の合格率は66.4%で、前年から低下しました。過去5年でも66〜75%の間で変動しており、年によって難易度に差があることがわかります。12科目という試験範囲の広さ、実習との両立の難しさ、参考書の少なさ、再受験者の存在といった要因が、合格率を左右しています。
早期からの過去問演習、科目ごとの優先順位づけ、実習中も続けられる学習ルーティン、模試の活用、苦手科目の可視化――これらを組み合わせた計画的な対策が、合格への近道と言えるでしょう。
12科目という範囲の広さは、裏を返せば「ことば・聞こえ・食べる機能」という人の生活に深く関わる領域を、それだけ幅広く学べるということでもあります。国試対策は決して楽な道のりではありませんが、一つひとつの科目が、資格取得後に現場で対象者と向き合う際の土台になっていきます。今日からできる小さな積み重ねを、ぜひ大切にしてください。
このブログでは、今後も言語聴覚士を目指す方・すでに現場で働いている方に向けて、国家試験対策や臨床現場で役立つ情報を発信していく予定です。次回以降の記事もあわせてチェックしてみてください。

コメント